天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

「宮廷からも国民からも、ここまで侮られる皇帝もいないだろうな」

 俺は乾いた笑いと共に自嘲した。

 他人に弱さを見せるようなことを言うのは俺にしてはとても珍しい。それだけ堪えているということでもあるし、雄珀を信頼しているということでもある。

「お前はな、優しすぎるんだよ」

 焼き上がった川魚を俺に渡しながら雄珀は言った。

「優しい? 冷徹皇帝といわれている俺が?」

 川魚を受け取り、ガブリとかぶりつく。元は山賊だったこともあり、雄珀の作る野営料理は絶品だ。川魚を焼くだけでもなぜこんなに美味しく焼けるのか不思議だった。

「お前は口下手で人見知りだからな。俺みたいに笑顔を振りまいていれば女から黄色い声が上がるぞ」

 雄珀は白い歯を見せて豪快に笑うと、俺は冷めた目で雄珀を睨みつけた。

「華蓮以外の女性に興味はない」

「おお、さすが鴛鴦の子孫」

 鴛鴦(えんおう)は神話の中でも珍しい一夫一婦制だった神である。おしどりの由来でもある。