「申し訳ございません! お嬢様のお気持ちを考えず、私はなんという軽率な言葉を!」

 床に頭をつけるほど深く謝る亘々に、私は慌てて駆け寄る。

「いいのよ、亘々はなにも悪くないわ。ただ、事実を言っただけですもの……」

 顔をあげた亘々は泣きだしそうな目で私を見上げた。

 そう、あの日助けてくれた彼は、もうこの世にいない。

「迎えに行くから」と言った言葉も、「お嫁さんにしてね」と言った約束も、一生叶うことはない。分かっていた。生き延びているはずがないということなど。分かっていた。待っていても、彼は来ない。

 私は偽りの微笑みを顔に張り付ける。本当は今すぐ声をあげて泣きたかった。

亘々は私の気持ちが分かっているからこそ、心の底から自身の言葉を後悔しているようだった。