65リットルよりも、笑って。





この苦笑いはきっと、元カレに見せていたままのもの。


いつから入院してるの、とか。
なんで入院してるの、とか。

たぶん気になることいっぱいだよね。



「なゆ…!!」



そうして担当医と並んで背中を向けたとき。

わりと大きめに呼び止められて、私はゆっくり振り返る。



「…院内ではお静かに」


「あっ、…すみません」



つい黙っている私の前に、なぜかそいつは一歩出た。

けれど元カレくんは私のことしか見えていないようで。



「なゆ、俺、また近いうち来るからさ。そのときとか…話せない?」


「んー、時間があったら?」


「ははっ。相変わらずで安心した」



また来るよ───、

そう言った櫂くんは、あの頃と変わらない表情で手を振ってくれる。


ハッキリ言うと私たちは別れなくても良かった。

学校が違くてそれぞれに新しい出会いがあったのは確かだったけど、お互いうまくやれないことはなかったと思うし。


でも、今なら思うよ。

あのとき別れていて正解だったって。