65リットルよりも、笑って。





「……えっ、」


「……なゆ…?」



偶然の鉢合わせとはよく言ったものだ。


それはリハビリを終えて、いつもどおり病室に戻ろうとしたとき。

ちょうど院内の食堂スペースを横切った場所で、見知った顔に出くわす。



「ひ、久しぶり~…、櫂(かい)くん」


「…どっか悪いの?」


「……あーっと、うん、ちょっと持病みたいものがあってね」



はい、嘘ついた。
どうしよう困ったな…。

他校の制服姿、相変わらず背が高い男だと見上げた。


そう、この男は高校1年生のときに付き合っていた元カレというやつだ。


たしか学校が違うところから始まったすれ違いで別れちゃったんだけど、歴代でいちばん良い彼氏だった……とは、思う。



「櫂くんこそ、どうしてこんなところに?」


「俺は祖父のお見舞い。昨日からここに入院してんだよね」


「…そう…だったんだ」



ちょっとタイミング悪すぎたな…。

今か……と、被っているウィッグにそっと触れた。