65リットルよりも、笑って。





「ちがうから。マジで違うからね?」


「…なにがだ」


「んーん。…はあ。べっつにー?」



鈍感で助かった。

本気で首を傾けているから、私の不安事なんか気づきもしない。


そこがまた狙っている看護師や患者さんたちの大きな課題らしいんだけど、私には関係ありませんので。


だから蓮夜、似てるとか絶対やめて。

そんなの言われたら推し変するしかなくなるから。

やっと画面の彼が少しずつ心を開いてくれているところなのに。



「ん…?蓮夜、ポッケに何か入ってるの?」


「あ!…へへへっ、オレのファイバーフォン!」


「ファイバーフォン?」



キリッとした顔で得意げに少年が取り出したものは、ヒーローが変身するために使う携帯型アイテムなのだと。

スマートフォンを連想させる構造になっていて、派手な色のボタンを押すと賑やかな音が鳴る仕組み。


ああ、これだったかも。


たまたま小児科病棟へ会いに行った日曜日の朝、蓮夜が夢中になっていたテレビ画面のなかでヒーローが手にしていたものは。