65リットルよりも、笑って。





私が少しでも疑いの目を向けると、彼女は空気を変えるように関係ない話題を出してくる。

待合室に設置されているテレビに映った俳優さんだとか女優さんだとか、新ドラマの話だとか。



「じゃあ、これで最後。ふとしたときにイライラしたりは…する?」


「あ…、うん。たまにあったかも…です」


「…わかりました。答えてくれてありがとう」


「いえいえ~」



たらい回しにされた結果、気づけば18時を過ぎていた。

大学病院だからか、待合室にちらほら座っている患者たちは点滴をしていたり車椅子を使っていたりと、診療所と比べると別世界だった。


逆に浮いている気がして、気分転換に売店でも見てこようかと思っていれば。



「佐野さん、5番診察室へどうぞ」



げげっ、最悪なタイミング。

なにそのポーカーフェイス。
ここでも他人のふりを続けてくるつもりか。


まあ……他人なんだけど。


さすがにあの日のこと忘れていたら、私以上に記憶力ショボすぎだよ。

それか消し去りたい過去にでもして永久封印?


………とりあえずジュース代返せ、バカ。