65リットルよりも、笑って。





「なゆちゃん、少しだけ質問させてもらうね。頭が痛いなって初めて感じたのはいつ頃かな?」



いつの間に手にしてたんだバインダー。


なんか、悪いことをさせた気持ちになる。
よく分かんないけど、変な気を回させたかなって。

べつにいいのに。

そうだったなら遠慮なく聞いてくれれば。



「頭が痛いのは~…っと、もうずっとだよ。忘れちゃった」


「じゃあ、その痛みが普通とは違うなって思ったのはいつ頃だろう?」


「んー……、あっ、体育祭のとき!」


「体育祭は何月?」



「6月だよ」と、悩むことなく答えることができた自分にホッとした。



「けっこう前ね…。それまでずっと我慢していたの?」


「…うん。病院とか薬とか、嫌いだし!」



真剣に記入していく手が、何歳くらいだろうと迷わせる。

小柄な体型とは裏腹に、声や態度は20代後半の女性特有の落ち着きを持っていた。


あの生意気な研修医より年上かもしれないな…と、ぜんぜん関係ないことを真面目に考えてみる。