「なゆちゃん、少しだけ質問させてもらうね。頭が痛いなって初めて感じたのはいつ頃かな?」
いつの間に手にしてたんだバインダー。
なんか、悪いことをさせた気持ちになる。
よく分かんないけど、変な気を回させたかなって。
べつにいいのに。
そうだったなら遠慮なく聞いてくれれば。
「頭が痛いのは~…っと、もうずっとだよ。忘れちゃった」
「じゃあ、その痛みが普通とは違うなって思ったのはいつ頃だろう?」
「んー……、あっ、体育祭のとき!」
「体育祭は何月?」
「6月だよ」と、悩むことなく答えることができた自分にホッとした。
「けっこう前ね…。それまでずっと我慢していたの?」
「…うん。病院とか薬とか、嫌いだし!」
真剣に記入していく手が、何歳くらいだろうと迷わせる。
小柄な体型とは裏腹に、声や態度は20代後半の女性特有の落ち着きを持っていた。
あの生意気な研修医より年上かもしれないな…と、ぜんぜん関係ないことを真面目に考えてみる。



