冗談ですって、冗談───、
なんて言っているそいつも俺のことを“冗談すら通じないつまらない男”だと思っているかもしれないが、俺からすればその冗談がつまらないんだ。
「でも。会ってみたかったなあ、俺も」
まだ命の出会いと別れを経験していない医者は、柔らかく呟く。
「…斑鳩 泰斗をこんな顔にさせた子、ですもん」
俺のデスクに飾ってあるフォトフレームを見つめ、表情を和らげた後輩。
キランと、そこに一緒にぶら下がっているネックレスまでもが光ったような気がした。
「…幸せすぎる顔してるだろ」
「はは。幸せそうな、じゃないんですね」
「ああ。…幸せすぎたんだ」
ふたりして幸せすぎる顔で笑ってるもんな、────…なゆ。
「ん…?この子は…?」
そして後輩はもうひとつの写真に気づく。
真ん中に小さなヒーロー、その真似っこをする俺たち。
「…俺たちの息子だよ」
「……え。ええっ!?」
「なんてな。冗談だ、冗談」
「……冗談に聞こえなかったんですけど」
「ふっ。ならそれでいい」
らしくないことを言った俺は微笑みながら、コーヒーではなく1本のエナジードリンクを喉に通した。



