本人は目を閉じて、なんとも微笑むように穏やか。
まるで「しあわせよ」と、最期まで言っているみたいだった。
最期、彼女は何を思い、誰を見て、その目尻に残る一筋の涙を流したのだろう。
その首の角度は、俺へと向いたままだった。
「─────………」
ニット帽、家族のような待ち受けをしたスマホ、いつも手にしていたゲーム機。
花、いっぱい飾ろうな。
埋もれるくらい飾って、おまえが好きなものを揃えて、たくさんの愛に囲まれて、たくさんたくさん。
まだ体温の残る手を握って、涙が残る頬を何度も撫でる。
なゆ。
最期だから、今まででいちばんらしくないこと、言ってもいいか。
「ネックレスより、結晶より…、ほんとうは、本当はな、……指輪…、渡してやりたかったんだ……っ」
おまえが笑っているときにカラーの花を持たせてやりたかった。
隣には俺がいて、一緒に笑っているような未来を。
「斑鳩…なゆ。…すげえ似合うぞ…っ」
約8ヶ月だった。
俺が佐野 なゆという少女と過ごした期間は。
短かった、短すぎた。
けれど、こんなにも満たされている心はなんだろう。
なにが俺の心を満たしてくれているんだろうか。
─────……しあ、わせ。
言葉は命を超せない。
それなら超えたんだよ、俺たちは。
俺たちはただ一緒に、言葉を超えた幸せを見ていたんだ。



