65リットルよりも、笑って。





「なゆちゃん。これね、休憩中に折ってみたんだけれど……斑鳩くん、なにか分かるかい?」


「……草、ですね」


「……うん。鶴なんだ」



渡会先生。

穏やかすぎる主治医だから、自分が病気なことをたまに忘れちゃいそうになる。

でも、いつも絶対的な安心だった。



「なゆ、動物園ぜったい行こう。約束な」


「……やく…、そく」


「俺はペンギン好きなんだよな。名前的にイルカじゃないのかっておまえは言いそうだが……でもまあ、なゆがいちばん可愛───、…寝てる」



先生、せんせ、斑鳩先生。

斑鳩 泰斗くん。


だいすき、大好き、だいすき。


この言葉だけは未来の泰斗くんの大切な人に譲るって決めてるんだ。

泰斗くんにとっての“特別”は私が取っちゃうだろうから、せめてそれだけはね。




「…なゆ。────……愛してる」




ねえ、先生。

言葉は命を超せないけれど、愛は命を超せるんだね。


あなたに出会えてよかった。

私はずっとずっと、しあわせ。


私の病気は先生と恋するために、こんなにも大切な人たちと出会うために必要不可欠なことだったんじゃないかって思ったら。


この病気をちょっとだけ、ほんのちょっとだけ。



好きに、なれたよ────……。