ただの偏頭痛でここまでしっかり検査してくれるなんてさすが大学病院だなあ……なんて呑気なことを思っていた私に。
40代ほどの一見穏やかそうな脳神経外科医は真剣な眼差しで診察室にて、どうしても保護者を呼んでくれと頼んできた。
「渡会(わたらい)先生、佐野さんの血液検査の結果ですが───」
そこで現れた、歳の若そうな白衣男。
まさかのってやつだ。
いくぶんか前、こんな顔をした生意気な男を駅のホームで見たことがある。
そいつもまた、私の顔を目にして一瞬だけリズムを崩すように言葉が止まった。
「…こちらに、なります」
「斑鳩(いかるが)くん、ちょうど良かった。君もここにいてくれるかい?」
「…わかりました」
え?なんて?
いか……?なんて??
思わず名札へと視線を移したものの……まったく読めない漢字すぎてそこも嫌な奴だと思った。
「い、か、る、が……?」
斑鳩 泰斗(いかるが たいと)。
ふりがなをひとつひとつ丁寧に追いかけて、やっと名前が完成する。
つぶやいた私に、おじさん医師が共感したようにうなずいた。



