65リットルよりも、笑って。





「そのとき私は思ったよ。たとえ病気は救えなかったとしても……患者の心だけでも救えるような医者になろうと。患者にとって何が起きても絶対的な安心として、僕は存在していたい。それが医者にできる最大であり、限界でもある」



絶対的な安心だった。


なゆが普段から何かあったら渡会先生がいると信頼を置いているように、俺にとっても彼は尊敬するすごい医者だ。


なゆにてんかん発作が起きた際、俺は必死に平常心を保とうとしていたが、実際は不安で震えて仕方がなかった。

でも渡会先生は落ち着いて声をかけ、確実な判断と対応をしてみせた。



「最期そう思ってもらえたのなら。それだけで僕はね、すくえたと思うようにしているんだ」



見方によっては自己満足かもしれないけれどね───と。

患者の優しさかもしれないと分かった上で、彼はそう言っていた。