65リットルよりも、笑って。





神様は選んでるのかな?と、なゆは最初の頃によく言っていた。

蓮夜がいなくなって、自分の症状も増えていくたびに理不尽な神様に対する、それがせめてもの悪態だった。


可愛すぎるんだよ、そんなものは。



「ただ、この治せない歴史が未来に繋がってもいくんだろう。救えない病気があることで、新たな発見や開発がされていくのも事実だ」


「…そんなの…、ふざけんなって話ですよ、」


「ああ、いま目の前で救えない命を見るたびに……僕も悔しい。けれどあるとき、担当した患者が言ってくれたことがあってね」



経験が人を強くさせ、成長させる。

なゆも俺に言ってくるが、俺はそんなの納得できない。


おまえを“それまでの道”にはしたくない。


どうしたって大切なんだ、特別なんだよ……おまえだけは。



「その患者も末期がんで余命数ヶ月だった。…最期、“先生が私の主治医で良かった”と、僕に笑ってくれたんだ」



それは単なる患者の優しさじゃないのか。

最後の最期になって医者のことを逆に気にかけてしまった、患者なりの気遣いとも言える。