「それで手には……誰かさんにカラーを持たせてもらおうかなあ」
たっくさん話すって決めたんだ。
脳にある私の病気は、記憶障害をはじめとした機能障害を起こりやすくなり、最終的に意識障害を生じて自分の意思による行動が取れなくなる。
自分のことが分かるうちに、自分で動かせるうちに、後悔しないように。
「カラーって結婚式のブーケによく使われる花だって知ってた?…なんかそれって、棺にいるのに花嫁さんみたいでしょ?」
なにを思ったのか、毎日こうして私の顔色をまず最初に見に来てくれる若き担当医は、表情をいつも以上に固めた。
ぐっと寄った眉間は、わずかに震えている。
「…泣いてね、先生。そのときだけは。……だから今はまだ泣いちゃだめ」
「おまえは…菜の花のほうが似合う」
「えー、庶民的すぎない?…でも先生がそう言うなら、それでいいかなあ」
このひとが私の、最後の男。
なぁんて言ったらどんな顔するのかな。



