65リットルよりも、笑って。





「最悪だよ…、もう……っ」


「…たとえこの先、おまえにどんな症状が出たとしても……俺はそばにいる」



その言葉を聞いたとたん、私の瞳から我慢していたものがドッと溢れた。

ベッドの上、期待いっぱいだったベッドの上、お互いにきちんと服まで着ちゃってバカみたい。



「うわあーーーー……っ」



声を上げて、めいっぱい。

わかんないけど止まらなくて、「いやだいやだ」って、何度も駄々をこねて。


65リットル、いっそ流しきってやろう。



「俺も……いやだ」


「あああーーーっ、…ううっ、」


「……ごめんな…、ごめん」



ごめんは、どう考えたって私のセリフだよ。

包まれた腕のなかでせめて笑ったとき、時計の針はすでに0時を回っていた。



「先生。…最期の日まで、私のそばに……いてほしい」



それだけで、わたしは、しあわせ。

わたしは、しあわせよ。



し、あ、わ、せ。



自分の意思では言葉が話せなくなって、自分のことすら分からなくなってしまう、近い未来の私へ。

どうにかしてでもこの4文字だけはぜったいに覚えていてください。


この言葉だけが、きっと彼をすくえる唯一だから───。