65リットルよりも、笑って。





「病院…、今日は、ぜったい戻りたくない」


「…俺だってそうだ」



その場で取り出されたスマホ。

てっきり私は主治医である渡会先生に電話をかけたのだと思っていたが、そうではないらしかった。


「佐藤先生」と呼ばれた声に、私の心が少しだけ軽くなる。



「…今日だけはふたりで過ごしたいんです。お願いします、病院には言わないでください」



きっと佐藤先生からも「今すぐ病院に戻れ」と言われたんだろう。

先輩と後輩。
だけでなく、医者としての会話を聞いた。



「…そうしてみます。ありがとうございます」



私への対応を口頭で説明されたようで、ある程度聞いたところで電話は切られた。



「もう、私…、2度と歩けない…?」


「…一時的な症状かもしれない。そこまで麻痺している感じではないから、少しすれば動くようになる可能性もある」



タイミングおかしいって。

神様はやっぱりどこかで見て笑ってるんじゃないの。