「せんせい、先生っ、なにこれ、やだ…、やだってば……っ!!」
動かない。
あしがね、うごかせないの。
たぶん、右足。
うまく言うこと聞かなくて、今までどう立ってたんだっけって、そこから分からない。
「たすけて先生……っ」
「ッ…!!」
私の叫び声にハッと意識を戻し、すぐさま医者の顔に変わる。
今日だけはその顔をして欲しくなかったし、させたくなかったのに…。
「大丈夫だ、だいじょうぶ…だ、」
あなたはまだ25歳。
あなたはまだ、研修医。
たとえ期待のルーキーだとしても、実践経験の浅い新人なんだよ。
脳腫瘍の影響で立てなくなった患者をたったひとりで落ち着かせるほうが難しいでしょう。
私をただ抱きしめてきた彼は「大丈夫」と、何度も何度も自分にも言い聞かせているみたいだった。
「どこ行くの…、どこにも…行かないで」
とりあえずベッドに寝かせられると、無理のないラクな体勢を作ってくれた。
そのまま寝室を出て行こうとするから、思わず引き留める。



