65リットルよりも、笑って。





「私、覚えてる。昔ね、もうずっと前にね、折り紙で輪っかを作って繋げて、お母さんと家のなかを飾ったんだ」



忘れてなんかいない。
忘れたくない思い出は、ちゃんと覚えている。


今朝食べたものとか、自分の血液型とか。

そういうものはすぐ忘れちゃうけど、今よりずっとずっと前の記憶は忘れてない。



「…なんで、」


「うん?」


「なんで……いつもそんなに笑っていられるんだ」



親戚のこと、母親のこと、自分のこと。

私の人生ってたぶん、決して笑顔で話せるものじゃない。


でもさ、本人が笑顔ならそれでいーんだよ。


それでいいんだと思う。



「んー。…今が楽しいから、かなあ」



そばにある冷たくも温かい手を、小さく握ってみる。


先生も暇じゃないのにね。

私だけじゃなく、他の患者さんの体調も診なくちゃいけないのに。