65リットルよりも、笑って。





「これから仕事なんだ。病院で俺を待ってる患者がいる」


「お、お医者さんなの…?」


「こんなくだらねえことに構ってるあいだに、救える命がひとつなくなるかもしれないんだよ」



すみません…と、気づけば素直な謝罪が飛び出していた。

お詫びになにか飲み物でも買ってあげようかと、自動販売機へ向かおうとした足は反射的に止まる。



「いっ……!!」


「…おい、」


「だ、大丈夫…、ただの…偏頭痛…、ちょっと待ってて…!ジュース買ってくるからっ」



初めて味わう、それは立てないくらい強いものだった。

ガチンッ!!と、音があったなら本当にそんな音。


頭がかち割れてしまうんじゃないの、冗談抜きでヤバいんじゃないのって危機感を生んでくる痛み。


なんとか呼吸を戻して、落ち着かせて、何事もなかったふり。



「はいっ!どうぞ!」


「…………」


「毒なんか入ってないよ?ほら、今そこで買ったやつだし!」



スススと、なぜか距離を取られる。

ぐいぐい押し付けて渡した小さなペットボトル、受け取ってくれたものの結局として空けられた距離。