65リットルよりも、笑って。





「そんなのは生き地獄だ」


「……いき、じごくって……、先生、それは苦しい…?」


「ああ。苦しい」


「悲しい…?私が死ぬより、そっちのほうが…悲しい?」


「悲しいだろ。好きな女が目の前にいるのに……優しくすることも許されねえとか…、無理だ」


「………へえ」


「…へえって、無関心すぎだろ」



そんなことないってば。

でもこのくらいわざとらしい反応してないと、ちゃんと会話すらできないんじゃないかって不安だから。


ズッ、ぐす、ズッ。


隠せるもんでもないね、ここまで来たら。



「俺は、おまえに触れたい。…なゆ」



拭っても拭っても、止まらない。

それが強がりや拒絶さえ無意味にしてしまう、何よりの本心だった。



「やさしく…する。やさしく、してやりたい」



もう十分優しくしてくれてるよ。
なに、そんな泣きそうな声してるの。

不安そうに覗きこんでくるから、涙ながらにも白衣をぎゅっと掴む。