65リットルよりも、笑って。





「なに…っ、もお~~~!!」



はーーーっと、全身の気が抜けた。


どうして名札を確認しなかったの私。

こんなにホッとしてる自分もワケわかんないし、たったそれだけで喜んでいる自分も理解不能すぎるお疲れ。



「……ふっ、ははっ…、あははっ!なにそれ最悪!」



ウィッグをくしゃっといじって、手持ち無沙汰ってだけでとくにズレてもいないニット帽を整える。

名前じゃなかった。
私のことだけ、名前で呼んでくれていた。


すると、スッとしゃがんできた影。



「っ、なに、」


「いや…、もっと見たいと思った」



そんなこと言われたらこっちまで緊張するし、うまく笑えなくなるんだってば。



「…どうせ担当医としての同情でしょ」



嫌味ではなく、軽々と言った。

それでもいいよ、それでいいよって、伝えるみたいに。


重荷を背負わせたいわけじゃない。
一緒に悩ませたいわけじゃない。


でも……いつまでも覚えていて欲しい。