じゃあ、あのときのキスは慰めじゃないってこと?
単純にあいつが私としたかったから?
そこまで考えて自嘲に変える私。
そんなものに気づいた美子ちゃんは、逆に穏やかな顔で続けてきた。
「裏を返せば、それはしたくない相手とはできないってことでしょう?」
「……それ、めちゃくちゃ誠実な紳士じゃん」
「そう。そのとおり誠実な紳士なの。私は聞いててそう思ったけどなあ」
ちがうちがう、正当化させてどーすんの。
あと美子ちゃんはちょっと勘の良さそうなところがあるから、あまりこういう話はしたくないや。
「難しいこと考えるのって、そこまで大切なことかしら」
きっと彼女は、相手がタイムリミットを抱えていなくとも同じように言っていたんだろう。
「とくに恋愛に関してはね。難しいこと考えれば考えるほど、落とし穴にハマっちゃう気がするの」
たぶん美子ちゃんだからこそ言える言葉だ。
気持ちは直球勝負でいくしかない、と。
どうして彼女だからこそ言える言葉なのか………ああもう、思い出せない。



