65リットルよりも、笑って。





「視界はどうだ」


「……いつもどおり」


「言語の違和感や、会話の違和感は」


「……とくには」


「今日は血圧も測る」



………なにこいつ。

一晩すぎたら記憶がリセットされる体質でもしてるの?


次の日、また次の日と、毎朝のように私のメディカルチェックにやって来る。


様子はいつもどおりで、表情ひとつピクリともさせない無愛想も健在。



「んもうっ、なにこれ巻けないっ」


「貸してみろ」


「っ、…いいって別に!」



金輪際関わらないと断言したのに、私が拒絶する前に今だって血圧測定器を腕に巻いてきた。


私が前よりもまた手先が不器用になっていること、細かい作業が苦手になっていること。

震えて上手く使えなくなっていること。


わざわざ言葉に出さず、動揺せず焦らずサポートしてくれるのが斑鳩 泰斗だった。