『…でもそれは、好きな人とじゃないと意味がないんじゃないかな』
佐藤先生、それは逆だよ。
あのね、私の場合は逆なの。
気持ちがない人間相手だったから、私だって冗談半分に頼むことができたんだ。
この人に言えなかったのは、この人だけには頼めなかったのは……結果、自分を傷つけて彼のことも傷つけてしまうから。
だってこの人に優しくされたら────たぶん私、好きになっちゃうんだもん。
「ふふっ、なんかヤバそー。修羅場?」
「こんなところで喧嘩とか、おもろ」
面白くなんかない。
あんたらと私は違うんだよ。
どうしてこんなに必死になって生きている私が、おまえらみたいな奴らに笑われなくちゃいけないの。
「あっ、なゆちゃんおかえり。思ったより早かったね。お祭り、斑鳩くんとは楽しめ───」
「もう寝る……っ」
それから花火の途中で飛び出して、病院に戻った。
表情を変えずに追いかけてきたそいつとは金輪際2度と関わってやるものかと誓って。
「…っ、サイテーだよ……もう…」
その夜、布団のなか。
何度も何度も感触を思い返すたびに、紛れもなく“嬉しかった”なんて感じてしまっている自分を殴りたくなった。
だってあんなにも優しすぎるキス、はじめてだったんだよ───…。



