65リットルよりも、笑って。





「…そっか。可哀想だとでも思ったんだ?」


「ちがう」


「憐れだって、見てられないって……そう思ったんでしょ?」


「違う」


「元カレにもあんなこと言われてっ、惨めな女だとでも思ったんでしょ…!?」


「そうじゃない」



だめ、だめ。


期待なんかしちゃいけないし、させることもだめ。

近いうち居なくなる人間に情を持たせて執着させたら、絶対ダメ。


あなたはこれからたくさんの病気と闘っていくべき医者。



「…したかったから、した」



未練を残してはいけない。

私はしっかり生きて、しっかり死んでいきたいの。


斑鳩先生、それがどれだけ無謀かを誰よりも知っているあなたが、私に執着なんか与えないでよ。



「っ、」



─────ばちんっ!!



「こんな慰めっ、いらない……!!」



キスがしたいと、少し前に佐藤先生に言ったのは私だ。

医者としてでいい、慰めでいい、なんて強がって怒られたのは私で、もう恋ができないどうのこうのと弱音を吐いたのだって私。


だから、お望みどおりキスができたことには変わりない。