65リットルよりも、笑って。





「きゃーー!ママっ、花火!花火あがったよ!!」


「ねー、きれいだね」


「おっきーーーっ!」



はしゃぐ子供、見守るお母さんにお父さん。

ぎこちなく手を繋いでは夜空を見上げている初々しい学生カップル。


友達同士でワイワイ盛り上がっては写真撮影に没頭する小中学生。


ドン、ドン、ドンと上がって、パラパラと名残惜しく散ってゆく。



「ねえ先生。私…あと、どれくらい生きられる?」



消して、消して。

こんな弱音なんか、花火の音にかき消されてしまえばいい。



「毎日…怖いんだよ、先生。私……怖いんだよ、死ぬってより…、忘れられていくのが」



後付けでいいって言ったよね、先生。
生きる意味なんか、そんなの後付けでいいって。

その後付けさえ、私は思い浮かばないって言ったら…?


そのとき、見上げていたはずの彼が、私をまっすぐ捉えた。



「なゆ」



ぽろりと、意識するより先に頬に落ちたひとつ。