「ね。こっち向いて」
「…?」
カシャッ───、
音を聞いてから男は察したようで。
思ったより良く撮れてしまった1枚ゲット。
ニヒっと笑いかければ、「やめろ」は言えなくなったみたい。
「先生ってさ、ふとしたときの顔のほうがいいよね」
「……どういう意味だ」
「んー、ひみつ」
変に構えさせると緊張が勝って不自然になるから、今みたいなの。
雑誌の表紙にでも使えるんじゃない?なんて思った1枚が、私のフォルダに保存された。
「はい泰斗くん、笑って~」
「………、」
インカメモード。
ずいっと近づいて、画面にふたりが並んだところでボタンを押す。
私たちが座る、土手につづく階段にて。
いつの間にか周りにも観覧客がぞろぞろと集まってきた。
カップルも多いし、こんなことをやったところで気にする人間なんかいない。



