65リットルよりも、笑って。





「ね。こっち向いて」


「…?」



カシャッ───、

音を聞いてから男は察したようで。


思ったより良く撮れてしまった1枚ゲット。

ニヒっと笑いかければ、「やめろ」は言えなくなったみたい。



「先生ってさ、ふとしたときの顔のほうがいいよね」


「……どういう意味だ」


「んー、ひみつ」



変に構えさせると緊張が勝って不自然になるから、今みたいなの。

雑誌の表紙にでも使えるんじゃない?なんて思った1枚が、私のフォルダに保存された。



「はい泰斗くん、笑って~」


「………、」



インカメモード。

ずいっと近づいて、画面にふたりが並んだところでボタンを押す。


私たちが座る、土手につづく階段にて。


いつの間にか周りにも観覧客がぞろぞろと集まってきた。

カップルも多いし、こんなことをやったところで気にする人間なんかいない。