65リットルよりも、笑って。





「なゆちゃんってなんだ。いつの間にそうなってんだよ」


「いつの間にって……気づいたら?」


「気づいたらなんで名前で呼ばれることがある」


「えー、それあなたが言う?自分もじゃん。気づいたら呼び捨てだったし」



409号室の扉をパタリと閉めて、どこか機嫌が悪そう。

私だってイライラしてるけど、これは症状なの。



「…そっちだって“くるみ”って若い看護師さんのこと、名前で呼んでるくせに」


「……なんでくるみだよ」


「っ、さあね!!」



なにそれ当て付け?
わざわざ今、その名前繰り返す必要あった?


ゲームも今日はちょっとやる気が起きないし、最近はとくにセーブしたまでの話を忘れてしまうことが多くて。

ゲームにまで支障が出るだなんて嫌になるよ。


せめてその世界でくらいはいろんなことを忘れたいのに。



「……なにこれ」



ひらりと、私の手に持たせられた1枚のプリント。

四つ折りにしていたようで、ずっと白衣のポケットで卵みたいに温めでもしていたのか。