雑にベッドに投げ捨てられた。

意地悪そうに口角を上げて、間宵紫月は私に覆い被さる。


「言われても、やめるかわかんねぇけど」


それから始まった、キスにも似た甘噛みは、さっきよりも強く、しつこかった。

味わったことのない感覚に溺れないよう、心の中で抗う。


けど……長い。長すぎる。

血を全部吸い尽くすつもりなのかと聞きたいくらいだ。

もう私の心臓はドキドキしすぎて破裂しそう。


「も、いい加減に――」


私が言いかけたとき、間宵紫月は唇を離した。


「ごちそうさま」


終わったと思うと、どっと体の力が抜ける。

デザートなんて言ってたけど、こんなの毎日やられたら私の身も心も持ちそうにない。


「……お前、もう寝たら?」

「えっ」


彼は私に向かってタオルケットを投げる。


……寝ろって、急に?


でも、今日は本当に疲れたし、今すぐ眠ってしまいたいのは確かだ。

――また、甘えてしまおうか。

甘えついでに、ひとつワガママを言ってみる。


「……ちっちゃい電気とか、ない?」


部屋を微かに照らしているのはカーテンの隙間の月明かりだけ。

間宵紫月は無言のままスイッチを操作し、常夜灯を点けてくれた。


「ありがと……暗いの、嫌いなの」

「へぇ、一緒に寝てやろうか」


そう言う彼に、首を横に振ってみせた。

これ以上、私の心臓に負担をかけないでほしい。


「冗談だよ。じゃあな」


間宵紫月の背中を見送って、タオルケットにくるまれてみる。

なんだかすごく心地よくて、もう起き上がるなんて無理だと感じた。


数時間前に会ったばかりの知らない人の家なのに、自分の家より安心できる。

――変なの、私。


そんなことを考えながら、私の意識は夢の中へ溶けていった。