「世界一綺麗だ。そのドレス、よく似合ってる」

互いに微笑み合っていると、プランナーがノックをして部屋に入ってきた。幸せそうな二人を見て微笑みを浮かべながら、「新郎新婦様もそろそろ移動をお願いします」と言う。

「はい」

二人は返事をし、チャペルは続く道を歩いて行く。椿は幸せを噛み締めながら、これまでのことを振り返っていた。

ただ家族に使用人のように扱われる日々だった。そんな中、結婚という形で手を差し伸べてくれた清貴に救われた。そして今、好きな人が隣にいるという幸せが当たり前になっている。

清貴の両親はドイツで交通事故で亡くなり、清貴は柊総合病院の院長となった。智也と由起子、そして梓は椿に対する虐待を始めとする犯罪で実刑判決をくらい、自由とかけ離れた場所にいる。しかし二人は笑って日々を過ごせている。

「清貴さん、これからもよろしくお願いします」

チャペルに入る直前、椿がそう言うと清貴も「俺の方こそよろしく頼む」と微笑む。

永遠を誓うためのドアが、ゆっくりと開いていった。