「渕野くん、少しだけ、話がしたい」
俺は話などしたくない。できる状態ではない。声を出すことすら、崩れる原因になってしまいそうで。喘ぐような呼吸音だけが、口から漏れていた。
唾液を飲んで、一緒に欲求をも飲み込む。言葉を選んで喋る、いつものような口調で喋る、それができる気がしなかった。飲み込んだばかりのものが、また新たに増えていく。
そもそも、なぜ、どうして、ここにいるのが俺だと知っていて、わざわざ近づいてきたのだろうか。まだ、篠塚は、まだ、俺がフォークで、自分がケーキであることに、気づいていないのだろうか。いや、気づいた上で、話がしたいと言っているのだろうか。一体何を話すことがあるのだろう。こっちは、喰いたくて、喰いたくて、それどころではないのに。喰わないように、堪えているのに。どうして。寄ってくる。篠塚は。どうして。俺に。寄ってくるのだ。避けている俺がおかしいと言われているみたいで、ならどうすればいいのかと物に八つ当たりしてしまいそうになった。
「渕野くん、は、俺と話すの、嫌かな……? だったら、俺の話を、ただ、聞いてほしい」
返事はしなくていいから、言いたいこと言ったら、大人しく帰るから。喋ると崩れそうだからと欲求を抑えながら無言を貫いてしまう俺を、自分と話すのが嫌なのだと解釈した篠塚は、俺に語って聞かせる方法を選び取った。そこまでして俺に言いたいこととは何なのか。不満か。愚痴か。篠塚に限ってそれはないかもしれないが、良いことではないのは明らかのように思えた。
ベッドの中の酸素が薄い。頭がくらくらし始める。いつまでも潜り込んではいられない。苦しさに堪えかねて、新鮮な空気を吸おうと顔を出す。呼吸は浅くしたまま。ごくりと喉を鳴らし、何もかもを飲み込んだ。
俺は話などしたくない。できる状態ではない。声を出すことすら、崩れる原因になってしまいそうで。喘ぐような呼吸音だけが、口から漏れていた。
唾液を飲んで、一緒に欲求をも飲み込む。言葉を選んで喋る、いつものような口調で喋る、それができる気がしなかった。飲み込んだばかりのものが、また新たに増えていく。
そもそも、なぜ、どうして、ここにいるのが俺だと知っていて、わざわざ近づいてきたのだろうか。まだ、篠塚は、まだ、俺がフォークで、自分がケーキであることに、気づいていないのだろうか。いや、気づいた上で、話がしたいと言っているのだろうか。一体何を話すことがあるのだろう。こっちは、喰いたくて、喰いたくて、それどころではないのに。喰わないように、堪えているのに。どうして。寄ってくる。篠塚は。どうして。俺に。寄ってくるのだ。避けている俺がおかしいと言われているみたいで、ならどうすればいいのかと物に八つ当たりしてしまいそうになった。
「渕野くん、は、俺と話すの、嫌かな……? だったら、俺の話を、ただ、聞いてほしい」
返事はしなくていいから、言いたいこと言ったら、大人しく帰るから。喋ると崩れそうだからと欲求を抑えながら無言を貫いてしまう俺を、自分と話すのが嫌なのだと解釈した篠塚は、俺に語って聞かせる方法を選び取った。そこまでして俺に言いたいこととは何なのか。不満か。愚痴か。篠塚に限ってそれはないかもしれないが、良いことではないのは明らかのように思えた。
ベッドの中の酸素が薄い。頭がくらくらし始める。いつまでも潜り込んではいられない。苦しさに堪えかねて、新鮮な空気を吸おうと顔を出す。呼吸は浅くしたまま。ごくりと喉を鳴らし、何もかもを飲み込んだ。



