「紘、ありがとう」
近くに設置されていた丸椅子に腰掛けた紘に、まずは感謝を口にした。喉の詰まりはなくなりつつあって。問題なく喋ることができた。不要なものが口から出るようなこともなかった。
飴を口に入れる。癖のようにすぐに噛み砕いてしまった。紘は俺が舐めないことを分かっていて、食って寝ろと言ったのだろうかと想像を膨らませる。恐らく、間違ってはいないだろう。
「めちゃくちゃ感謝しろよ。危うくクラスメートを一人ずつぶっ飛ばしそうになったところを、あれくらいの挑発で抑えて連れ出したんだから」
「……ぶっ飛ばすつもりだったわけ」
「そりゃそうだろ。瞬のこと何も知らないくせに好き勝手言いやがって。殺人鬼扱いした奴もいるし、瞬を貶めるような愚痴まで本人の前で言いやがる奴もいるし。おまけに瞬は何も言い返さないだろ。何してんだよ、って瞬を見てみたら、気持ち悪いくらい顔真っ青になってんだから。見てられなかったわ」
いっつも澄ました顔してんのに、あんな余裕ない瞬、初めて見た。溜まっていた鬱憤を捲し立てるように吐き散らす紘は、クラスメートに対して怒りを露わにしていた。俺は当事者であってもそのような怒りの感情はほとんどなかったが、紘はそうではないようだ。まるで自分のことのように怒ってくれる紘の存在はありがたかった。干渉せずに放っておく方が、紘に害はなかったはずなのに。
噛み砕いた飴を飲み込んだ。まだなんとなく物足りなさを覚えて、もう一つ食べることにした。掴んで包装を破き、丸い塊を口に含む。奥歯で割る。細かくしていく。味はするが、篠塚の唾液よりも薄く感じられた。本物のケーキほど、美味いものなどないのではないか。いつか篠塚を喰えたなら。傷つけることなく味わえる術を身につけられたなら。殺してしまうかもしれないことに苦しむ必要はなくなるだろうか。
近くに設置されていた丸椅子に腰掛けた紘に、まずは感謝を口にした。喉の詰まりはなくなりつつあって。問題なく喋ることができた。不要なものが口から出るようなこともなかった。
飴を口に入れる。癖のようにすぐに噛み砕いてしまった。紘は俺が舐めないことを分かっていて、食って寝ろと言ったのだろうかと想像を膨らませる。恐らく、間違ってはいないだろう。
「めちゃくちゃ感謝しろよ。危うくクラスメートを一人ずつぶっ飛ばしそうになったところを、あれくらいの挑発で抑えて連れ出したんだから」
「……ぶっ飛ばすつもりだったわけ」
「そりゃそうだろ。瞬のこと何も知らないくせに好き勝手言いやがって。殺人鬼扱いした奴もいるし、瞬を貶めるような愚痴まで本人の前で言いやがる奴もいるし。おまけに瞬は何も言い返さないだろ。何してんだよ、って瞬を見てみたら、気持ち悪いくらい顔真っ青になってんだから。見てられなかったわ」
いっつも澄ました顔してんのに、あんな余裕ない瞬、初めて見た。溜まっていた鬱憤を捲し立てるように吐き散らす紘は、クラスメートに対して怒りを露わにしていた。俺は当事者であってもそのような怒りの感情はほとんどなかったが、紘はそうではないようだ。まるで自分のことのように怒ってくれる紘の存在はありがたかった。干渉せずに放っておく方が、紘に害はなかったはずなのに。
噛み砕いた飴を飲み込んだ。まだなんとなく物足りなさを覚えて、もう一つ食べることにした。掴んで包装を破き、丸い塊を口に含む。奥歯で割る。細かくしていく。味はするが、篠塚の唾液よりも薄く感じられた。本物のケーキほど、美味いものなどないのではないか。いつか篠塚を喰えたなら。傷つけることなく味わえる術を身につけられたなら。殺してしまうかもしれないことに苦しむ必要はなくなるだろうか。



