紘、と声をかけようとしたところで、彼の手が俺から離れた。紘は物も言わずに扉に手をかけ、勢いよく開け放つ。鍵が閉まっていたかもしれないのに、躊躇のないその行動に意表を突かれながらも、紘だからそうなるか、と簡単に受け入れてしまった。良い意味で大胆な人なのだ。
逃げるつもりはないのに、そのつもりだったら既に逃げているのに、まるでそれを防ぐかのように再度俺の腕を取った紘が、中へと足を踏み入れた。紘の歩みは止まらない。彼の視線は奥のベッドにあるようで。そこで俺を寝させるつもりだろうか。寝させるつもりかもしれない。ベッドに乱暴に放り投げるようにして手を離され、無理やり座らされた。紘が持っていた俺のカバンを胸に押し付けてくる。反射で受け取ると、今度は両肩を掴まれた。
「飴食って寝ろ。休め」
言うこと聞かないとこのまま襲うぞ。俺を見下ろし、襲う、と続けられ、それは困る、と顔を背けた。真剣なのは伝わった。本気で心配してくれているのも伝わった。大人しく言うことを聞くのが賢明だろうか。寝ろ、休め、と言われてしまうくらい、他人の目からはまだ体調が悪く見えるのかもしれない。何より、冗談だとしても、紘に襲われたくはない。気持ち悪いが先行する。
言われた通りに、飴を食べて少し休ませてもらおうとカバンのチャックを開けた。紘の手が肩から離れる。彼は俺の食欲を少しでも落ち着かせるために、これを一緒に持ってきてくれたに違いない。飴からはもう、気休め程度の効果しか得られなかったが、食べないよりかはましだった。頭痛も吐き気も、ゆっくりとではあるが凪いでいる。予想通り、それらの症状は精神的なものだったのだろう。
逃げるつもりはないのに、そのつもりだったら既に逃げているのに、まるでそれを防ぐかのように再度俺の腕を取った紘が、中へと足を踏み入れた。紘の歩みは止まらない。彼の視線は奥のベッドにあるようで。そこで俺を寝させるつもりだろうか。寝させるつもりかもしれない。ベッドに乱暴に放り投げるようにして手を離され、無理やり座らされた。紘が持っていた俺のカバンを胸に押し付けてくる。反射で受け取ると、今度は両肩を掴まれた。
「飴食って寝ろ。休め」
言うこと聞かないとこのまま襲うぞ。俺を見下ろし、襲う、と続けられ、それは困る、と顔を背けた。真剣なのは伝わった。本気で心配してくれているのも伝わった。大人しく言うことを聞くのが賢明だろうか。寝ろ、休め、と言われてしまうくらい、他人の目からはまだ体調が悪く見えるのかもしれない。何より、冗談だとしても、紘に襲われたくはない。気持ち悪いが先行する。
言われた通りに、飴を食べて少し休ませてもらおうとカバンのチャックを開けた。紘の手が肩から離れる。彼は俺の食欲を少しでも落ち着かせるために、これを一緒に持ってきてくれたに違いない。飴からはもう、気休め程度の効果しか得られなかったが、食べないよりかはましだった。頭痛も吐き気も、ゆっくりとではあるが凪いでいる。予想通り、それらの症状は精神的なものだったのだろう。



