呼吸が浅くなっていく。それでも食欲はなくならず、口の中のものを繰り返し何度も飲み込み続けた。クラスメートの本音のような言葉の羅列に脳がぐらぐらと揺れるのを感じ、次第に視界が暗くなっていくような気持ちの悪い感覚に陥る。頭が痛い。吐き気が酷い。口を押さえた。唾液なのか胃液なのか分からない液体が口腔を満たし、何度も何度も、飲み込んだ。吐きそうだった。
「さっきから黙って聞いてたんだけどさ、みんな好き勝手言いすぎじゃね?」
そんなんだから瞬に相手にしてもらえないんだよ、可哀想だな。嘲笑と共に空気を揺らしたその台詞が、がやがやしていた教室に沈黙を作らせた。直後、椅子が床に擦れるような音が響き、その気配が近づいてくるのを察する。彼と席はそれほど離れてはいなかった。
瞬、と上から声が降ってくる。唯一下の名前で呼び合っている相手でもある紘の声が、落ちてくる。下がっていた視線を上げると、いつの日か見たことのある真剣な眼差しをした紘と目が合った。ちょっと来い、と有無を言わさずに腕を掴んできた紘に引っ張られるようにして席を立った俺は、その咄嗟の動作に胃を刺激され嘔吐きそうになった。俺に余裕がない時でも遠慮のない紘は、流れるような所作で机の横にかけていた俺のカバンを手に取り、片手で口を押さえて嘔吐感を堪える俺に構うことなく歩き出す。嫌な注目を浴びていた。鼓動が速まった。頼れる人は、紘しかいなかった。
酸素のない水中に潜っていたかのように息苦しかった教室から出て、そこよりもいくらか呼吸のしやすい廊下を、紘にリードされるがまま彼の後に続いた。
自分たちのいなくなった教室がどんな声で埋め尽くされるのか、考えたところで良いことは思い浮かばなかった。俺のみならず、紘の愚痴も言われてしまうかもしれない。ケーキのいる一家を殺して回っている殺人鬼が近くにいるという恐怖が、全員をナーバスにさせているのだと思うことにした。それこそ、俺を殺人鬼に仕立て上げようとするほどに。
「さっきから黙って聞いてたんだけどさ、みんな好き勝手言いすぎじゃね?」
そんなんだから瞬に相手にしてもらえないんだよ、可哀想だな。嘲笑と共に空気を揺らしたその台詞が、がやがやしていた教室に沈黙を作らせた。直後、椅子が床に擦れるような音が響き、その気配が近づいてくるのを察する。彼と席はそれほど離れてはいなかった。
瞬、と上から声が降ってくる。唯一下の名前で呼び合っている相手でもある紘の声が、落ちてくる。下がっていた視線を上げると、いつの日か見たことのある真剣な眼差しをした紘と目が合った。ちょっと来い、と有無を言わさずに腕を掴んできた紘に引っ張られるようにして席を立った俺は、その咄嗟の動作に胃を刺激され嘔吐きそうになった。俺に余裕がない時でも遠慮のない紘は、流れるような所作で机の横にかけていた俺のカバンを手に取り、片手で口を押さえて嘔吐感を堪える俺に構うことなく歩き出す。嫌な注目を浴びていた。鼓動が速まった。頼れる人は、紘しかいなかった。
酸素のない水中に潜っていたかのように息苦しかった教室から出て、そこよりもいくらか呼吸のしやすい廊下を、紘にリードされるがまま彼の後に続いた。
自分たちのいなくなった教室がどんな声で埋め尽くされるのか、考えたところで良いことは思い浮かばなかった。俺のみならず、紘の愚痴も言われてしまうかもしれない。ケーキのいる一家を殺して回っている殺人鬼が近くにいるという恐怖が、全員をナーバスにさせているのだと思うことにした。それこそ、俺を殺人鬼に仕立て上げようとするほどに。



