甘美な果実

 ごくりと唾液を飲み込んだ。頭の中で篠塚を喰った。喰って、喰って、喰って。泣き叫ぶ篠塚を殺した。妄想が止まらなかった。自分が壊れそうだった。落ち着けと何度も言い聞かせた。落ち着け。落ち着け。この空気に飲まれて暴走してしまったら終わる。昨日も一昨日も、今日までずっと、この異常な食欲に堪えてこられたのだから、今日だって、堪えられないわけがない。クラスメートに死刑を望まれている殺人鬼みたいになるわけにはいかない。俺は誰も喰い殺さない。

 思ったんだけどさ、あの猟奇殺人鬼って、ケーキのいる一家を全員殺してるんだよな。そうだよ、とんでもない奴だよな。でも、それってさ、自分含めて、家族にケーキがいなければ、狙われることはないってことじゃね。ああ、言われてみれば。そっか、そうなるのかな。ケーキがいなければ、怖がる必要はないのか。でも、ケーキの判断って、自分ではできないよ、フォークじゃない限り。じゃあ、フォークを探せばいいじゃん。どうやって。挙手制とか。誰が自分から名乗り出るんだよ。フォークは味覚がないんだし、なんか適当なもの食べさせて、味を聞けばいいんじゃない。そんな簡単にいくかな。それはやってみないと。仮にもしフォークを探し出せたとして、そのフォークが一般的なフォークじゃなかったらどうするの、良い子の仮面、被ってたら。化けの皮を剥ぐようだったら、みんなで取り押さえればいい。凶暴なフォークは少数派だから、判明したフォークが全員そういうタイプだとは思えない。人数もフォークじゃない人の方が多いはず。フォークの人いればさ、一人一人に、ケーキとかケーキじゃないとか教えてよ。だから、名乗り出る人なんかいないって。フォークには全員の家族を見て欲しい。それで誰もケーキじゃなかったら、あのシリアルキラーに狙われる心配はなくなる。フォークの人、いるのかな。もしいるなら、誰がフォークなんだろ。