フォークって、鼻が利くって聞くし。あ、洒落になったわ。利くと聞くって、うわ、クソほど面白くねぇな。俺もっと面白いタイプだと思ったんだけど。なんだ、めちゃくちゃ言うだけで人を笑わせられる瞬の方がめちゃくちゃ面白いな。めちゃくちゃ。
また揶揄うようにその単語を擦り始める紘に、いつまでも引き摺り回すなよ、傷だらけになるだろ、と俺もなかなかにおかしなことを口にしてしまう。めちゃくちゃはただの言葉で、目に見えるものではないのに。
傷だらけって、おもしろ、やっぱ瞬ってめちゃくちゃ面白いな。めちゃくちゃはもう飽きたからやめろよ。なんでだよ、飽きんなよ、もっと引き摺り回せるわ。引き摺り回すなよ。もう、瞬ってば冷たい。別に冷たくない。
中身のない頭の悪そうな会話であっても紘はどこか楽し気で、なんかまた飴舐めたくなったわ、と何も考えてなさそうな能天気な声で言い、ガサゴソとポケットを弄った。そこでふと動きを止め、何やら俺に目を向けてきた紘は、太陽が薄暗い雲に隠れるかのように表情を曇らせ、僅かに眉尻を下げるなり了承を得るように訊ねてきた。
「飴、舐めてもいい?」
「紘に気を遣われるのはなんか凄く気持ち悪いからやめて」
「うわ、辛辣」
紘は曇らせていた表情を晴れさせ、それじゃあ、遠慮なく舐めさせてもらうな、と適当な飴を取り出し封を切った。個包装は黄色。レモン味だろうか。
隣で飴を舐め始める紘をちらりと見て、それから俺は自身の足元に視線を落とす。今後紘と同じものを食べても味の共有ができないのかと考えたら、何とも言えない寂しい気持ちになった。甘いも苦いも辛いも酸っぱいも、その食べ物が美味しいか美味しくないかも、気軽に話題にはできない。過去の記憶しかない俺とでは盛り上がれない。俺が味を感じなくなったために、会話の糸口が一つなくなったのだ。
また揶揄うようにその単語を擦り始める紘に、いつまでも引き摺り回すなよ、傷だらけになるだろ、と俺もなかなかにおかしなことを口にしてしまう。めちゃくちゃはただの言葉で、目に見えるものではないのに。
傷だらけって、おもしろ、やっぱ瞬ってめちゃくちゃ面白いな。めちゃくちゃはもう飽きたからやめろよ。なんでだよ、飽きんなよ、もっと引き摺り回せるわ。引き摺り回すなよ。もう、瞬ってば冷たい。別に冷たくない。
中身のない頭の悪そうな会話であっても紘はどこか楽し気で、なんかまた飴舐めたくなったわ、と何も考えてなさそうな能天気な声で言い、ガサゴソとポケットを弄った。そこでふと動きを止め、何やら俺に目を向けてきた紘は、太陽が薄暗い雲に隠れるかのように表情を曇らせ、僅かに眉尻を下げるなり了承を得るように訊ねてきた。
「飴、舐めてもいい?」
「紘に気を遣われるのはなんか凄く気持ち悪いからやめて」
「うわ、辛辣」
紘は曇らせていた表情を晴れさせ、それじゃあ、遠慮なく舐めさせてもらうな、と適当な飴を取り出し封を切った。個包装は黄色。レモン味だろうか。
隣で飴を舐め始める紘をちらりと見て、それから俺は自身の足元に視線を落とす。今後紘と同じものを食べても味の共有ができないのかと考えたら、何とも言えない寂しい気持ちになった。甘いも苦いも辛いも酸っぱいも、その食べ物が美味しいか美味しくないかも、気軽に話題にはできない。過去の記憶しかない俺とでは盛り上がれない。俺が味を感じなくなったために、会話の糸口が一つなくなったのだ。



