明るく元気な店員に歓迎されながら、先に入って行った紘の後を篠塚と共に追う。店内には自分たちと同じ制服を着た数人グループの学生が散見された。一大イベントでもある体育祭が終わった放課後だ。考えることは皆同じのようだ。
「瞬、篠塚、ここでいい?」
片手で手招き、ここ、と紘が指をさした席は、入り口から一番奥に位置する厨房側の端の席だった。場所にそれほどこだわりのない俺はどこでも問題はないが、篠塚はどうだろうと俺の斜め前にいる彼の挙動を窺う。いいよ、と頷くところだった。
三人でそこに腰を落ち着ける。俺と紘が隣同士で座り、俺の向かい側に篠塚が腰を下ろした。メニュー表を紘が手に取るタイミングで、店員が三人分の水を運んできてくれる。各々お礼を言い、飲食店でよく耳する定形文を口にした店員は踵を返した。
「何食うよ」
紘が第一声を上げ、メニュー表を開いた。前のめりで覗き込む。彼が見ているのはスイーツの一覧だった。時間的に夕食はまだ早い。篠塚もスイーツ目的だろう。誘ってくれた時に、確かそのようなことを口にしていた。
スイーツはどれも美味しそうな見た目をしてはいるが、どれを食べても味のしない俺には、食欲を掻き立てられるほどの魅力はそれほど感じなかった。いつしかそうなってしまった。美味しそうだと思いはするが、食べた時の味を期待するのはやめたのだ。美味しいのは見た目だけだ。その見た目を瞳に映しただけで、勝手に腹が満たされてくれればいいのに。
「悩むな。けど、やっぱこれだわ」
パンケーキ。紘は言いながら指を差し、二人が決まったら店員さん呼ぶな、とメニュー表を俺と篠塚の方へスライドさせた。俺がフォークで味を感じないことを知っていても気を遣うことのない、良い意味で無遠慮な紘に、ここに来れば食後にいつも食べていたパンケーキをこの場でも変わらず食べようとする平常運転の紘に、俺は人知れず安心感を覚えた。
「瞬、篠塚、ここでいい?」
片手で手招き、ここ、と紘が指をさした席は、入り口から一番奥に位置する厨房側の端の席だった。場所にそれほどこだわりのない俺はどこでも問題はないが、篠塚はどうだろうと俺の斜め前にいる彼の挙動を窺う。いいよ、と頷くところだった。
三人でそこに腰を落ち着ける。俺と紘が隣同士で座り、俺の向かい側に篠塚が腰を下ろした。メニュー表を紘が手に取るタイミングで、店員が三人分の水を運んできてくれる。各々お礼を言い、飲食店でよく耳する定形文を口にした店員は踵を返した。
「何食うよ」
紘が第一声を上げ、メニュー表を開いた。前のめりで覗き込む。彼が見ているのはスイーツの一覧だった。時間的に夕食はまだ早い。篠塚もスイーツ目的だろう。誘ってくれた時に、確かそのようなことを口にしていた。
スイーツはどれも美味しそうな見た目をしてはいるが、どれを食べても味のしない俺には、食欲を掻き立てられるほどの魅力はそれほど感じなかった。いつしかそうなってしまった。美味しそうだと思いはするが、食べた時の味を期待するのはやめたのだ。美味しいのは見た目だけだ。その見た目を瞳に映しただけで、勝手に腹が満たされてくれればいいのに。
「悩むな。けど、やっぱこれだわ」
パンケーキ。紘は言いながら指を差し、二人が決まったら店員さん呼ぶな、とメニュー表を俺と篠塚の方へスライドさせた。俺がフォークで味を感じないことを知っていても気を遣うことのない、良い意味で無遠慮な紘に、ここに来れば食後にいつも食べていたパンケーキをこの場でも変わらず食べようとする平常運転の紘に、俺は人知れず安心感を覚えた。



