「誰にも恋なんかしてない」
「じゃあ、されてる側だな」
「紘はそれが原因だって思ってる?」
「一番あり得そうなことじゃん」
「俺が誰かに恋されてるとは思えない」
「気づいてないだけじゃね?」
「気づいてないだけ?」
「瞬みたいなちょっと毒舌でサドっ気のあるクール系イケメンを周りがほっとくはずがねぇよ」
「……仮にもしそうだとしたら、周りがマゾすぎてきしょい」
「そういうところだな」
紘は楽しそうに笑い、飴を舌で転がした。いつまでも舐めている。紘はよく舐めて味わう派だった。すぐに噛み砕いてしまった俺とは真逆だ。味がしない物をいつまでも舐めることは俺にはできなかった。
飴すらも、俺は美味しく舐められない。舐められなくなった。それまで美味しいと感じていた物が全て、味のしなくなったガムのように変化し、人生を彩る色が一色、消えた気がした。それは何色だろうか。先程俺が噛み砕いて潰して抹消したイチゴ味の赤だろうか。隣で紘に舐められゆっくりと消えているオレンジ味の橙だろうか。分からないが、それらのような明るい色が消えたことは確かだった。
いきなりバグを起こした俺の舌はもう、普通の食事を楽しめない。誰もが口にする普通の食事を味わう機能を、前触れもなく即座に破壊されてしまったのだ。その代わりのように、新たな機能が瞬時に備え付けられた。
「まぁ、普通に考えて、誰かに、言ったらケーキだよな。ケーキの人に好かれて、普通の人だった瞬がフォークになったって考えるのが妥当じゃねぇかな」
カリッと今度は歯と歯の間に置いた飴を噛み砕くような音がした。よく舐めるタイプではあるが、紘も最終的には噛み砕くのだ。そのタイミングが早いか遅いかだけの違いに過ぎない。早く噛んだとしても、遅く噛んだとしても、俺は全く味わえなくなってしまったが。紘の言うことが正しいのであれば、ケーキの人が俺に好意を抱いたことで。
「じゃあ、されてる側だな」
「紘はそれが原因だって思ってる?」
「一番あり得そうなことじゃん」
「俺が誰かに恋されてるとは思えない」
「気づいてないだけじゃね?」
「気づいてないだけ?」
「瞬みたいなちょっと毒舌でサドっ気のあるクール系イケメンを周りがほっとくはずがねぇよ」
「……仮にもしそうだとしたら、周りがマゾすぎてきしょい」
「そういうところだな」
紘は楽しそうに笑い、飴を舌で転がした。いつまでも舐めている。紘はよく舐めて味わう派だった。すぐに噛み砕いてしまった俺とは真逆だ。味がしない物をいつまでも舐めることは俺にはできなかった。
飴すらも、俺は美味しく舐められない。舐められなくなった。それまで美味しいと感じていた物が全て、味のしなくなったガムのように変化し、人生を彩る色が一色、消えた気がした。それは何色だろうか。先程俺が噛み砕いて潰して抹消したイチゴ味の赤だろうか。隣で紘に舐められゆっくりと消えているオレンジ味の橙だろうか。分からないが、それらのような明るい色が消えたことは確かだった。
いきなりバグを起こした俺の舌はもう、普通の食事を楽しめない。誰もが口にする普通の食事を味わう機能を、前触れもなく即座に破壊されてしまったのだ。その代わりのように、新たな機能が瞬時に備え付けられた。
「まぁ、普通に考えて、誰かに、言ったらケーキだよな。ケーキの人に好かれて、普通の人だった瞬がフォークになったって考えるのが妥当じゃねぇかな」
カリッと今度は歯と歯の間に置いた飴を噛み砕くような音がした。よく舐めるタイプではあるが、紘も最終的には噛み砕くのだ。そのタイミングが早いか遅いかだけの違いに過ぎない。早く噛んだとしても、遅く噛んだとしても、俺は全く味わえなくなってしまったが。紘の言うことが正しいのであれば、ケーキの人が俺に好意を抱いたことで。



