俺が飯泥棒になるだろ。そんなダサい二つ名付けられたら格好がつかない。口腔を空にした紘が、ずっとその場を動かない、動こうとしない俺を見兼ねたように、彼らしい台詞回しで行動を促してきた。
飯泥棒。個性的なワードが印象に残り、自らも舌に乗せて小さく呟いてみる。確かに格好悪く、心中穏やかでなくなる。
飯泥棒というのはただのお笑いなだけで実際には呼ばれるようなことはないだろうが、そう呼ばれる紘を想像したら、どこか不憫に思えた。友人を飯泥棒にはさせられない。させられないが、でも。
篠塚が、と口をついて出そうになり、咄嗟に飲み込んだ。顔を逸らした。上手く返答ができなかった。誰もそんな二つ名付けないだろ、という余裕のある返しもできなかった。
うだうだせずに大人しく紘について行った方がいいのかもしれないが、彼について行くということはつまり、篠塚がいるであろう教室に向かうということだ。同じクラスである以上避けることはできない事象だが、今みたいにそれができる状況なのであれば、できるだけそうしたかった。例えそれが自己満で、気休めにしかならなくても。
ふと、気づいた。唐突に、上から何かが降ってくるように、俺の腰が重たい理由が判明したような気がした。もしかしたら俺は、いや、もしかしなくても俺は、篠塚に会うのが怖いだけなのかもしれない。だからこそ、腰や足が重く、気分が乗らないのかもしれない。
何も起きないという確証がないのは、不安ばかりを募らせる。自分が普通のフォークではないことが、言動を消極的にさせる。紘が近くにいてくれるのに、酷く孤独を感じた。
俯き、沈黙する俺に、紘は困ったように、はたまた呆れたように溜息を吐いた。そして、ゆっくりと、階段を上り始める。そんな気配がする。そんな足音がする。程なくして、俺と同じ色のシューズが視線の先に見えた。頭上から、声が降ってきた。
飯泥棒。個性的なワードが印象に残り、自らも舌に乗せて小さく呟いてみる。確かに格好悪く、心中穏やかでなくなる。
飯泥棒というのはただのお笑いなだけで実際には呼ばれるようなことはないだろうが、そう呼ばれる紘を想像したら、どこか不憫に思えた。友人を飯泥棒にはさせられない。させられないが、でも。
篠塚が、と口をついて出そうになり、咄嗟に飲み込んだ。顔を逸らした。上手く返答ができなかった。誰もそんな二つ名付けないだろ、という余裕のある返しもできなかった。
うだうだせずに大人しく紘について行った方がいいのかもしれないが、彼について行くということはつまり、篠塚がいるであろう教室に向かうということだ。同じクラスである以上避けることはできない事象だが、今みたいにそれができる状況なのであれば、できるだけそうしたかった。例えそれが自己満で、気休めにしかならなくても。
ふと、気づいた。唐突に、上から何かが降ってくるように、俺の腰が重たい理由が判明したような気がした。もしかしたら俺は、いや、もしかしなくても俺は、篠塚に会うのが怖いだけなのかもしれない。だからこそ、腰や足が重く、気分が乗らないのかもしれない。
何も起きないという確証がないのは、不安ばかりを募らせる。自分が普通のフォークではないことが、言動を消極的にさせる。紘が近くにいてくれるのに、酷く孤独を感じた。
俯き、沈黙する俺に、紘は困ったように、はたまた呆れたように溜息を吐いた。そして、ゆっくりと、階段を上り始める。そんな気配がする。そんな足音がする。程なくして、俺と同じ色のシューズが視線の先に見えた。頭上から、声が降ってきた。



