唾を、飲んだ。息を、吐いた。この先の未来に漠然とした不安が膨らみ、心臓が嫌な音を立てていた。緊張に似ている。身体が強張る。意識的に深呼吸を繰り返す。が、胸から聞こえる鼓動は静かにならなかった。
顔を覆っていた両手を離し、力を抜くように溜息を吐いた。それから、気を紛らわすように咳払いをする。大丈夫。大丈夫。どんなに喰いたくなっても、我慢してみせる。俺は、我慢できる。できる。決してヘマはしない。何があっても堪えてみせる。
唾液で喉を鳴らし、騒がしい鼓動に制服の上から手で触る。伝わる振動を感じながら、何度目か分からない深呼吸をする。戻ろう。教室に。そう思ったが、腰が異様に重たく感じ、立ち上がれなかった。いつまでも屋上前に居座るわけにはいかないのに。
「あ、発見」
言うことを聞かない身体に治安悪く舌を打ちそうになっていると、何の前触れもなく声がして。現実に帰るように顔をそちらへ向けた。階段の折り返し地点、四階と五階の間に位置するスペースで足を止め、俺を見上げている人物と目が合った。紘だった。自分の唇が、ひろ、と動くのが分かった。
「いろいろ聞いて回って探したわ、瞬。こんなところにいたのかよ。トイレに行ったっきり全然戻ってこないから心配した」
紘は安堵したように息を吐き、ポケットを弄って個包装を取り出した。俺を発見した途端に小腹でも空いてしまったのだろうか、彼は手すりに凭れかかり、包装を破いて中の丸い固形を口に入れた。薄い緑っぽいそれだった。メロンかマスカットだろうか。
好物の飴を舐める紘は、俺を見つけたからといって無理に連れ戻そうとしたり、何があったのかと問い質したりしてくるような様子がなかった。飴を舐める彼の姿は、もう見慣れたそれだった。
「俺が何味口に入れたか、そこから見えた?」
「……メロンかマスカット」
「正解じゃん。マスカットでした」
顔を覆っていた両手を離し、力を抜くように溜息を吐いた。それから、気を紛らわすように咳払いをする。大丈夫。大丈夫。どんなに喰いたくなっても、我慢してみせる。俺は、我慢できる。できる。決してヘマはしない。何があっても堪えてみせる。
唾液で喉を鳴らし、騒がしい鼓動に制服の上から手で触る。伝わる振動を感じながら、何度目か分からない深呼吸をする。戻ろう。教室に。そう思ったが、腰が異様に重たく感じ、立ち上がれなかった。いつまでも屋上前に居座るわけにはいかないのに。
「あ、発見」
言うことを聞かない身体に治安悪く舌を打ちそうになっていると、何の前触れもなく声がして。現実に帰るように顔をそちらへ向けた。階段の折り返し地点、四階と五階の間に位置するスペースで足を止め、俺を見上げている人物と目が合った。紘だった。自分の唇が、ひろ、と動くのが分かった。
「いろいろ聞いて回って探したわ、瞬。こんなところにいたのかよ。トイレに行ったっきり全然戻ってこないから心配した」
紘は安堵したように息を吐き、ポケットを弄って個包装を取り出した。俺を発見した途端に小腹でも空いてしまったのだろうか、彼は手すりに凭れかかり、包装を破いて中の丸い固形を口に入れた。薄い緑っぽいそれだった。メロンかマスカットだろうか。
好物の飴を舐める紘は、俺を見つけたからといって無理に連れ戻そうとしたり、何があったのかと問い質したりしてくるような様子がなかった。飴を舐める彼の姿は、もう見慣れたそれだった。
「俺が何味口に入れたか、そこから見えた?」
「……メロンかマスカット」
「正解じゃん。マスカットでした」



