甘美な果実

 俺には何を言ってもいいと思っているような節のある紘は、良い意味で遠慮がなく、俺もまた、紘には漠然とした信頼を寄せているせいか、遠慮することなく思ったことを吐露してしまう節があるのだった。

「そんなことよりさ、気づいたことがあるんだよ」

「何?」

「クラスメートに篠塚(しのづか)っているだろ?」

「……うん」

「俺の見解では、篠塚は瞬のこと好いてるよ」

 ケーキかどうかは俺には分からないけど、でも、篠塚の瞬を見る目は確実に恋してる目だ。瞬にガチ恋してる人は女子だとばかり思い込んでたからなかなか気づけなかった。今時は同性でも何もおかしくねぇのに。

 篠塚はケーキじゃねぇのかな。もしケーキだったら、篠塚が関係あるかもしれない。紘は俺の反応を見ることもなく一気に核心に迫り、彼がケーキかどうかの判断を俺に委ねてきた。俺は内心動揺していた。紘が告げた篠塚こそが、俺が唯一知っているケーキの人であり、俺に怯えているため、件の原因ではないと弾いた人だったからだ。

 篠塚が俺のことを好いているはずがない。そのはずなのに、紘の目から見た篠塚は、全くそうではないらしい。俺が鈍感すぎるのか、紘が大袈裟すぎるのか。いずれにせよ、それらは予想でしかない。篠塚の本音は、篠塚にしか分からない。俺と篠塚は本音を言い合えるほどの信頼関係を築けていない。篠塚が俺に好意を抱いているだなんてありえない。紘に言われても信じられない。

 ないないと否定してばかりだが、紘の声色からも彼が嘘を吐いているとは思えず、ならば本当なのかと篠塚の言動を今一度思い返してみても、紘が言うような要素を俺には見せていないだけなのだろうか、避けるか怯えるかしている姿しか思い浮かばない。それしか俺は知らない。篠塚の行動から読み取ったそれが、それ自体が、俺の勘違いとでもいうのだろうか。