柔らかい風が、少しばかり沈黙する俺と紘の間を通り過ぎ、髪を揺らした。紘は今、何を考えているだろうか。俺を気遣う言葉だろうか。それは気持ち悪いと言ったが、もしかしたら、彼に気持ち悪いことをさせているのは自分なのかもしれない。
空気が重たい。紘の表情を確認しようと彼に目を向ける。彼は思案顔だった。何をそんなに考え込んでいるのか。
大体いつもすぐに返ってくるはずの言葉が今はないことに僅かながら不安を覚えつつも、新たに付け加えるような事柄も思いつかず。俺は唇を引き結んだまま紘を視界から外して前を見た。
特にカーブもなく、真っ直ぐとした道が先に続いている。車道は二車線。それなりに車は走っているが、テレビでよく見る都会の交通量と比べると圧倒的に少ない。歩道を歩いたり、自転車で走ったりする人も疎らだ。
その疎らな人のうちに俺と紘は加わっているし、ずっと向こうからはこちら側に向かって歩いて来ている人の姿もあった。その人も疎らな人のうち。どこにも曲がらなければ、いずれすれ違うだろう。
珍しく黙って思考を巡らせている紘を隣につけたまま、まだまだ先にいる人の姿をぼんやりと眺める。
男か女か。あれは多分男だ。上下ともに黒い服。それと同じくらい重たく黒い髪。近くで見たら違うのかもしれないが、ここからは全身黒尽くめに見えた。黒を好んでいるのだろうか。分かる気がする。俺もどちらかと言えば、モノトーンの落ち着いた色の方が好きだ。
前方にいる人を不躾に観察していると、左側で、舐めていた飴をガリッと噛み砕くような音がした。いや、間違いなくその音だ。ガリ、ガリ、ガリ。
一個目と違って少し攻撃的にも聞こえる音から、今回は飴に鞭を打つのが早いな、などと心底くだらない感想を抱きつつも口には出さず、眺めていた誰か知らない男から目を逸らして紘を盗み見た。砕いた飴を飲み込んだのか、喉仏が上下するところだった。
空気が重たい。紘の表情を確認しようと彼に目を向ける。彼は思案顔だった。何をそんなに考え込んでいるのか。
大体いつもすぐに返ってくるはずの言葉が今はないことに僅かながら不安を覚えつつも、新たに付け加えるような事柄も思いつかず。俺は唇を引き結んだまま紘を視界から外して前を見た。
特にカーブもなく、真っ直ぐとした道が先に続いている。車道は二車線。それなりに車は走っているが、テレビでよく見る都会の交通量と比べると圧倒的に少ない。歩道を歩いたり、自転車で走ったりする人も疎らだ。
その疎らな人のうちに俺と紘は加わっているし、ずっと向こうからはこちら側に向かって歩いて来ている人の姿もあった。その人も疎らな人のうち。どこにも曲がらなければ、いずれすれ違うだろう。
珍しく黙って思考を巡らせている紘を隣につけたまま、まだまだ先にいる人の姿をぼんやりと眺める。
男か女か。あれは多分男だ。上下ともに黒い服。それと同じくらい重たく黒い髪。近くで見たら違うのかもしれないが、ここからは全身黒尽くめに見えた。黒を好んでいるのだろうか。分かる気がする。俺もどちらかと言えば、モノトーンの落ち着いた色の方が好きだ。
前方にいる人を不躾に観察していると、左側で、舐めていた飴をガリッと噛み砕くような音がした。いや、間違いなくその音だ。ガリ、ガリ、ガリ。
一個目と違って少し攻撃的にも聞こえる音から、今回は飴に鞭を打つのが早いな、などと心底くだらない感想を抱きつつも口には出さず、眺めていた誰か知らない男から目を逸らして紘を盗み見た。砕いた飴を飲み込んだのか、喉仏が上下するところだった。



