半開きの口から涎が垂れそうになり、濡れた息を吐きながら手の甲で拭って。そのまま、何も考えずに自分の腕に噛みついた。自分を喰うという奇行に走ってしまいながらも、自分は何の味もしなかった。意味がなかった。それでも俺は、歯を肉に食い込ませた。食欲を抑えられるのなら、自分を傷つけることなど厭わなかった。
感覚が麻痺するほどに思い切り噛んで、血が滲みそうなほどに牙を立てて、食欲を抑え込むためだけに自傷行為のようなことをしていると、サッと視界が開けるような妙な明るさに包まれた。その直後、微かに漂い続けていた甘い匂いが急に濃くなって、俺の鼻腔を貫いた。誘われるがままに首を動かす。こちらを見つめる人の姿があった。その人物が、仕切りカーテンを開けていた。篠塚、だった。理性の糸が限界まで張り詰める。いつ切れてもおかしくなかった。
「渕野くん……」
声を揺らす篠塚が、一歩、俺に近づいてきた。篠塚。篠塚。なぜ。どうして。戻ってきた。どうして。自ら危険に足を踏み入れるのだ。篠塚。俺は篠塚のことが、分からない。やっぱりさっぱり、分からない。一体、何を、考えて。篠塚。篠塚。ダメだ。喰いたい。喰いたい。喰い尽くしたい。近づくな。
喉が詰まっているかのように声が出せず、首を絞められているかのように呼吸がままならない。ケーキを前に興奮し過ぎて、全身が燃えるように熱い。苦しい。苦しい。我慢できない。もう、我慢できない。喰いたい。全部。喰いたい。喰えば、楽になれるのなら、喰ってしまいたい。今すぐに。
腕から歯を離し、自分が今、どのような目つきをしているのかも、篠塚がその頭で何を思っているのかも判然としないまま、彼を見て。何度目か分からない舌舐めずりをした。目の前のケーキを、余すことなく全て、喰いたい。
感覚が麻痺するほどに思い切り噛んで、血が滲みそうなほどに牙を立てて、食欲を抑え込むためだけに自傷行為のようなことをしていると、サッと視界が開けるような妙な明るさに包まれた。その直後、微かに漂い続けていた甘い匂いが急に濃くなって、俺の鼻腔を貫いた。誘われるがままに首を動かす。こちらを見つめる人の姿があった。その人物が、仕切りカーテンを開けていた。篠塚、だった。理性の糸が限界まで張り詰める。いつ切れてもおかしくなかった。
「渕野くん……」
声を揺らす篠塚が、一歩、俺に近づいてきた。篠塚。篠塚。なぜ。どうして。戻ってきた。どうして。自ら危険に足を踏み入れるのだ。篠塚。俺は篠塚のことが、分からない。やっぱりさっぱり、分からない。一体、何を、考えて。篠塚。篠塚。ダメだ。喰いたい。喰いたい。喰い尽くしたい。近づくな。
喉が詰まっているかのように声が出せず、首を絞められているかのように呼吸がままならない。ケーキを前に興奮し過ぎて、全身が燃えるように熱い。苦しい。苦しい。我慢できない。もう、我慢できない。喰いたい。全部。喰いたい。喰えば、楽になれるのなら、喰ってしまいたい。今すぐに。
腕から歯を離し、自分が今、どのような目つきをしているのかも、篠塚がその頭で何を思っているのかも判然としないまま、彼を見て。何度目か分からない舌舐めずりをした。目の前のケーキを、余すことなく全て、喰いたい。



