そして嬉しい知らせがもう一つ。

「錬成師ギルドで流れてたショコラの悪評、少しずつ解消されてるみたいだね」

「えっ、そうなの?」

「実際にショコラの武器を使って大型の討伐依頼を達成した冒険者がいるみたいだよ。その人の宣伝の効果もあって、今度は逆にショコラを評価する声が挙がってるって守衛騎士が言ってた」

「……そう、なんだ」

 思いがけないことを聞かされて、じわじわと嬉しさが込み上げてくる。
 錬成師ギルドで広まっていた噂まで無くなってきているんだ。
 一時は王都での錬成師活動すら危ぶまれたっていうのに……

『ショコラ様の噂がすでにギルド内に流れておりまして、徒弟の引き受けをしているアトリエからはすべて志願拒否をされております。ですのでギルド側からご紹介できる場所は一つも……』

 それが今は、噂も消えかけていて、こうして町の冒険者たちにも話題にされている。
 ブラックなアトリエでこき使われて、錬成師人生を台無しにされた私が……

「嬉しそうだね、ショコラ」

「……うん。錬成師として実力を認めてもらうのって、こんなにも嬉しいことなんだね」

 それもこれも全部、目の前にいる幼馴染のおかげなんだと思うと、例えようのない気持ちが湧いてくる。
 胸中で感謝の言葉を送りながら、私は素材採取のためにアトリエを出た。
 これなら自分のアトリエを持った時も、問題なくお客さんは来てくれるだろう。
 思えば悪い噂をそのままにしていたら、自分のアトリエを開いたとしてもお客さんは来てくれなかったのではないだろうか。
 だからこうしてクリムのアトリエにいる間に、悪評を解消できて本当によかったと思う。
 このままクリムのところで修行を続けたら、僅か三年で品評会への出品もできるみたいだし。
 風向きは間違いなく良くなってきている。

「お母さん、もう少しだよ」

 もう少しで、お母さんの夢だったアトリエを開くことができるよ。
 お母さんがすごい錬成師だったってことを、みんなに伝えることができるよ。
 そのためにもっと知名度を上げておこうと思って、足早に素材採取に向かっていると……

「ショコラ」

「……?」

 町を出る直前、不意に後ろから声を掛けられた。
 まさかついに顔までバレてしまったか? なんて満更でもない気持ちで振り返ると……

「えっ……」

 そこには、思いがけない人物がいた。
 私の噂を聞きつけて声を掛けて来た人ではない。
 それ以前から私のことを知っている人物。
 どうして今さら、この人が私に声を掛けてくるのだろうか。

「やっと見つけたぞ、ショコラ……!」

「バ、ババロア、様……」

 私の以前の錬成術の師範――ババロア・ナスティがそこにはいた。