称号にはそれぞれ取得するための条件があり、【孤独の採取者】も例外ではない。
私はその条件を満たしたから称号を獲得できたわけで、神境に映し出されたステータスにそれも記述されていたと思うけど、正直よく覚えていないなぁ。
クリムはそれを正確に覚えていたようで、呆れた表情で返してきた。
「『魔物領域での長時間の素材採取を継続日数300日で取得』。そんなことしてる暇がないし、そもそも条件に曖昧なところがありすぎて取得できる気がしないんだよ」
「曖昧?」
「まず“長時間”がどれくらいの時間を指しているのか。あと“素材採取”はどれくらいの素材を採ればいいのか」
あぁ、確かに曖昧なところだらけだ。
“継続日数300日”というのは明確に数字が記されているけれど、それ以外の記述は具体性に欠くものが多い。
特にクリムの言った“長時間”と“素材採取”のところが。
「魔物領域を一時間くらい探索して、素材を一つ持ち帰るくらいのことなら三百日続けてる人間がいても不思議じゃないだろ。でもこれまでに【孤独の採取者】の称号を授かった人間の記録は残されていない。それくらいのことじゃダメってことだ」
クリムはカゴに琥珀の丸薬を仕舞いながら、続けて私に問いかけてきた。
「ちなみにショコラは一日どれくらい素材採取をしてたの?」
「えっと、平均八時間くらいかな? 去年とかは特にひどくて、十時間は魔物領域で素材採取をしてたと思う。一日で集める素材の数も、魔物素材なら最低三十個、自然素材は日が暮れるまで集めさせられてたかな」
「……」
何の参考にもならないね、とクリムはまた呆れるようにこぼした。
「ま、その辺りのことが曖昧だから、再現性がなくて試す気にもならないってことだよ」
「なるほどねぇ。あっ、それじゃあ逆に、私が【至高の錬成師】の称号を取っちゃえばいいんじゃない? そうすれば私も錬成物の状態を至高まで上げられるし……」