「えっ、ちょっと待って? ていうことは、私が今まで採取してきた素材には、全部上等な性質が付与されてたってこと?」

「まあ、そういうことになるね。【孤独の採取者】の称号を授かってからにはなるけど、今日まで集めてきた素材には希少な性質が付与されてたに違いない。だとすると、“ババロアのアトリエ”がここ最近で繁盛してるのも納得がいく」

「ど、どういうこと……?」

 ほくそ笑んだクリムは、不意に私の背後に回り込んで来る。
 そして私のリュックから、採取して来たばかりの長寿草を取り出すと、それをこちらに見せながら続けた。

「ものに宿ってる性質は、錬成によって引き継ぐことができる。つまりこれを錬成の素材に使えば、簡単に超性能の錬成物を生み出すことができるんだよ」

「そ、それじゃあ……」

「ババロアは近頃、高品質の錬成物ばかりを生み出してアトリエを繁盛させてる。でもそれは奴の実力でもなんでもなかったんだ」

 クリムは心地よい笑顔でこちらを見つめながら、はっきりと断言した。

「ショコラが最高品質の素材を採取してたおかげで、ババロアは超性能の錬成物を量産できてたってことだよ」

「……」

 私の、おかげで……
 ババロアが生み出していた良質な品々は、全部私のおかげだったってことなの?
 それなのに私は、素材採取係としてこき使われて、最後には過労で倒れてアトリエを追い出された。

「何よ、それ……」

 例えようのない感情で胸を満たしていると、クリムは私の手を取って、聖職者さんに挨拶しながら歩き始めた。