するとクリムが、ハッと何かに気付いたように目を見開いた。
「ショコラ、余分に採って来た“素材”とかあるか!?」
「素材? まあ一応、薬草として使おうと思ってた長寿草なら少しだけ……」
と言いながらリュックから取り出すと、クリムは閃くような勢いで長寿草に手を伸ばしてきた。
長寿草の一本を右手に持ちながら、魔法の式句を口早に唱える。
「【偽りなき文言――隠された真実を――この手に開示せよ】――【詳細】」
手に持った長寿草が僅かに光り、直後にその光が文字となって浮かび上がってくる。
それを見て、クリムはか細い声を漏らした。
「……やっぱりだ」
「……な、何が?」
「素材だよ。ショコラの集めて来た素材の方に、とんでもない性質が宿ってたんだ……!」
「はっ?」
素材に性質が……?
いったい何を言っているのだと怪訝な目を向けてしまったが、すかさずクリムが鑑定結果を見せてきて、私は絶句する。
◇長寿草
詳細:豊富な栄養素を持つ薬草
特に根の方に貴重な栄養が集まっている
一本摂取すると寿命が一年伸びると言われている
性質:治癒効果上昇(S)
「…………」
最高ランクの治癒効果上昇の性質。
本当に、素材に性質が宿っている。
本来なら錬成術によって付与させるはずの特別な力が、素材の段階ですでに宿っている。
自然界で採取して来た素材そのものに性質が宿ることは通常あり得ないはずなのに。
どうして私が採取して来た素材に性質が……?
「性質は錬成によって引き継ぐことができるから、この素材を使うだけでとんでもない性質を宿した傷薬が出来るんだ」
「だから、こんな傷薬が出来たってこと……?」
「うん。でも、いったいどこに行ってこんな素材を採取して来たんだ?」
「ど、どこって、普通に西にあるブールの森で採って来たけど……?」
ブールの森はこの町の錬成師や鍛治師にとっては代表的な採取地だ。
この王都から一番近い場所にあるし、気候も穏やかで魔物の強さも並程度。
それでいて汎用的な素材を落としてくれる種族が多いから、かなり重宝されている場所となっている。
「僕だってしょっちゅうブールの森に採取には行くけど、性質付きの素材なんか見たことないよ」
「た、たまたま、とかじゃないのかな……」
「たまたまでこんなことがあり得るわけないだろ。性質が付与された素材なんか聞いたこともないし、そのうえ凄腕の錬成師が千回に一回生み出せるかどうかの希少な性質ばかり宿ってるんだから。何か“特別な力”でもない限り……」

