私が作った傷薬が、なんかおかしかった。
普通に素材を集めて、普通に錬成をしただけなのに、傷薬にとんでもない『性質』が宿っている。
「な、何この性質……? なんでこんなすごい性質が、私の傷薬に……」
性質は、錬成術によって生み出された錬成物に宿る、“特殊な力”のことだ。
例えば錬成した武器を丈夫にする『耐久性強化』だったり、爆弾の威力を増強する『爆発力強化』だったり。
それらは錬成物の性能を格段に跳ね上げさせてくれる。
だから性質それ自体が、錬成した傷薬に付与されているのは何もおかしくはないのだが……
「わ、私、性質が付与できるほど、錬成術上手くないのに……」
性質付与ができる錬成師は、“熟練の錬成師”のみに限られているはずなのだ。
錬成時に注ぎ込まれる錬成師の“魔力”と“想像力”によって、付与される性質が決まるから。
だからろくに錬成術の修行をしてこなかった私が、性質を付与できるはずもない。
しかもこんなにすごい性質を。
◇清涼の粘液
詳細:溶液の粘液を素材にした傷薬
患部に塗ることで治癒効果を発揮する
微かに清涼感のある香りが宿っている
状態:良
性質:治癒効果上昇(S)解毒効果付与(S)継続治癒追加(S)
性質の強さを示す『性質ランク』が限界地点の“S”で、そんな性質が三つも付与されている。
これを使うだけで一瞬にして傷が塞がり、ついでに毒も完治し、しばらく継続的に傷が塞がるようになってしまうのだ。
まさに万能の秘薬。
これ、本当に私が作ったの?
「ショ、ショコラ、自分でこの性質を付与したわけじゃ、ないんだよね?」
「で、できるわけないでしょそんなこと。私、普通の性質付与もまだできないのに……」
「そ、そうだよね」
魔物討伐を繰り返していたから、魔力はそれなりに高い方だと思う。
だからたまたま性質が付与できちゃった、っていう可能性も考えられるけど、だとしてもSランクの性質をこんなに発現させられるはずがない。

