私は慌ててその後を追いかける。
 その最中、あまりにも淡々とクリムが話を進めてしまうので、思わず私は彼の背中に問いかけた。

「で、でも、本当に私でいいの? 私、徒弟を破門されるような錬成師なのに……。クリムの足とか引っ張るかもよ」

「特別難しいこと頼むわけじゃないから安心しなよ。とりあえずまずは簡単な素材採取だけやってもらうつもりだから。それに邪魔だと思ったらすぐに追い出すし」

「じゃ、邪魔って……」

 いやまあ確かに、雇い主のクリムにはその権限がある。
 気に入らなければ追い出すこともできるし、私は雇ってもらう身だから何も言うことができない。
 逆にそういう緊張感がある方が、こちらとしてはありがたいかもしれないけど。
 昔馴染みだからと変に気を遣ってもらうより、一人の見習い錬成師として扱ってもらいたいから。
 同情なんかで一人前になれたとしても、お母さんに顔向けできない。
 改めて緊張感を抱きながらクリムの後をついて行くと、やがて明るい大通りが見えてきた。
 そして裏路地から出る直前、私はハッとしてクリムの袖を掴んで止める。

「あっ、その……!」

「んっ?」

「いや、なんて言うか、その…………」

 そういえば“これ”を言うのを忘れていた。
 嫌いな相手にこんなこと言うのは、かなり癪というか躊躇われるのだけど。
 どうしようもない状況を助けてくれたのは事実なので、さすがにこれだけは伝えておかないとまずいよね。

「…………あ、ありがと」

「……ん」

 顔が熱くなるのを自覚しながら、私はクリムの後に続いて宮廷へと向かった。