電車に揺られて、2人並んで座って帰る。

窓側に添うように縦になった座席の隅っこに、そこしか空いてないぐらいいっぱいだった。

花火の帰りだからこんな時間でも多いよね。

まだ降りる駅まではもう少しある。

足を組みながら腕を組んで、ふあっと大きな口であくびをしたケイが隣にいて。

「…ねぇ二重人かっ」

格のことって誰か知ってるの?
って聞こうとしたら、さっきまで半分寝かかっていたのに何かを察知したケイが鋭い眼光を飛ばして来た。

「……。」

ふぅっと息を吐いて飲み込んだ。

ここで二重人格とかまずかった…よね。
そうだよねよくなかったよね、誰が聞いてるかもわかんないもんね。

言葉が物騒過ぎるよね…

ちょっと聞きたかったんだけど、聞けるような場所じゃないよね…

「紫衣しか知らねぇよ」

「え?」

「質問の答え」

「…。」


私しか知らない?


目をぱちくりさせちゃった。

だってケイが生まれたのはもうずいぶん前だって… 



それなのに私しか知らないの?



彗くんが二重人格なことを知らない、てことは…



ケイを知ってる人はいないってこと?


誰も知らないの?




ケイのことは私しか知らない…